ねぇ、放さないよ?
事故に見せかけて、美里愛が殺された。

これを期に、有愛と二人っきりになれた。
こんなに嬉しいことはない。

あぁ、顔がにやける。

でもダメだ!
しばらくは、有愛を立ち直らせることに集中しないと。
僕も、妻が亡くなった可哀想な夫を演じなければ!



でも嬉しくて、有愛とふたりでいられることが幸せで、どうしても喜びが言動に出てしまう。

有愛にも、少し不審がられた。

だから、誤魔化す。

「美里愛の為だよ」と━━━━━━

有愛との、二人だけの空間がほしい。

このマンションは“美里愛との思い出があるから、心機一転”ではなく“美里愛の思い出を消し去りたい”からいらない。


“万が一”があった場合でも、有愛を閉じ込めることができるマンション。

少し前から、探しだしていた。

引っ越して、僕達の“新婚生活”が始まったのだ。



しかし━━━━━

有愛の“お姉ちゃんの旦那”という言葉が、僕を苛立たせ、つい本音を言ってしまう。

「━━━━━せっかくいなくなったのに」



この言葉が、有愛の心を放すきっかけを作ってしまった。

有愛は、引っ越しを考えるようになる。


賃貸雑誌を見つけた時は、とてつもない怒りに震えた。

こんな物、抹殺しなければ!


僕は夜更けに煙草を火を押し付け、雑誌を燃やしたのだ。


こんな物があるから、有愛が僕から放れようとする。
こんな物があるから………




そして、この僕を怒りのどん底に突き落とす出来事が起きたのだ。

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