ねぇ、放さないよ?
「美里愛の為だよ」

「え?お兄さん?」

「美里愛の為にも、元気出さなきゃ!
美里愛が悲しむ」

「お兄さん…
……………そうだよね…!」

「ね?ありちゃん、笑って!」

微笑む玄琉に、有愛もつられるように微笑んだ。



「━━━━━ありちゃん」
「ん?」


「突然だけど、引っ越さない?」

「………」
「ありちゃん?固まってる」

「え?え?引っ越すの?」

「ここには、たった一年だけだけど……美里愛との思い出がある。
美里愛の為に前を向くには、心機一転した方がいいんじゃないかなって!」
「う、うん」


“早速、部屋を見に行こう”
そう言われ、玄琉の運転する車に乗っている有愛。

運転する玄琉の横顔を見つめた。

この人は、お姉ちゃんの旦那さん。
しかも、お姉ちゃんは亡くなったばかりだ。

わかっている。
わかっているのに…………


どこか……

嬉しい━━━━━━━


(私って、こんな………性格悪かったっけ?
最低……!)



「━━━━━こちらです」

「凄い部屋…」
「ん。やっぱ、いいな!」

「え?お兄さん?」
「実はさ。ずっと目はつけてたんだ、ここ。
ありちゃん、ここでもいい?」

「私は、何処でも……
あ、でも!」
「ん?」

「ここ…家賃……」

「フフ…気にしないで?
言ったよね?
ありちゃんの為に、何でもしてあげたいって!」


そして玄琉の言われるまま、引っ越した有愛。

目まぐるしく時が過ぎ、気づけば三ヶ月経っていた。


錯覚しそうになる━━━━━━━

玄琉とは、義理の兄妹だ。
なのに、まるで新婚夫婦みたいなのだ。

朝起きると、必ずベッド脇に玄琉が腰かけていて、笑顔で見つめている。
「おはよ、ありちゃん!」

「お、おはよう…/////
毎日、恥ずかしいから寝顔見ないで!」

「嫌だよ(笑)ありちゃん、可愛いんだもん!
見てて癒される!」

「私は可愛くなんか……
お姉ちゃんと比べたら、余計に━━━━━」
「ありちゃん!!」

「え?」
「それ、言わない約束でしょ?
ありちゃんは、可愛いよ!スッゴく可愛い!
…………それに、美里愛の話はやめろよ…
………せっかく、いなくなったのに……」

「え………今…なんて…?」
< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop