私たちの物語に、花を添えて
病院に向かっている間、店員さんのことが頭から離れないでいた。

「やぁ。見舞いに来たよ」

私が病室に入ると、ベッドの上で本を読んでいた友だちが顔を上げる。

「……わざわざ来てくれたんだ……ありがと」

友だちは、私に向かって微笑んだ。私は、友だちにさっき買った花を見せる。

「この病院の近くにあった花屋で買ったんだ」

床頭台の上に置かれている花瓶に、私は花を差す。

「綺麗だね。君が選んだの?」

「ううん。店員さんに選んでもらった」

「……そっか」

それから、私は最近あったことを友だちに話した。友だちは、楽しそうに私の話を聞いてくれる。

気が付けば、もう5時を回っていた。

「私、そろそろ帰るね」

「ん。またね」

友だちと別れて、私は病室を出て駅へと向かう。友だちの見舞いの花を買った花屋の近く。

「あの、すみません」

花屋の店員さんの声が聞こえてきて、私は声がした方を向いた。

「はい」

「先程は、花を買って頂きありがとうございました」

ぺこり、と店員さんが頭を下げる。それから、私と目を合わせた店員さんはニコリと微笑んだ。ドキリ、と胸が高鳴る音がする。

「いえ……」
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