天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~
「あれ?」
美々が男の腕に密着させるように腕を絡ませて甘えながら歩いていると、見知った顔が見えた。
それもいつものように一人ぼっちでは無く男と一緒。
あの地味女が誰と、と興味本位で見ていればそれは女性達の憧れ芝崎。
笑っている誠と戸惑ったような顔の素子が向かい合うような横顔が飛び込んできて、美々は目を疑った。
(なんで?なんであの芝崎さんとあの女が?!)
二人にバレないよう思わず男を引っ張り離れて様子を見ていれば二人は改札で別れた。
誠が自分たちの方に来そうになったので慌てて美々は建物の陰に隠れる。
「どうしたの?」
「しっ」
美々と何度か食事をしている男は美々の不審な行動に戸惑いながらも一緒に隠れた。
美々曰く、彼氏でも何でも無く食事に連れて行ってくれる人という認識だが相手は気付いていない。
誠は既に誰かとスマートフォンで話しているようだが、その顔が笑っているのを見て美々は相手が女だと確信した。
それと同時に納得する。
あんな女と芝崎さんが何かあるわけ無いのに。
「ねぇ美々ちゃんどうしたの?」
「んー?やっぱり出来る男ってどうしようもない相手にも手は抜かないんだなって」
男は美々が笑いながら言うその言葉に首をかしげた。