天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~
第三章 追求


それから誠と素子のやりとりが始まった。
誠は駅まで素子を送ったが心配なので帰宅したら連絡が欲しいと言う誠に、素子はお礼と無事家に着いたこと、そして心遣いの感謝を送った。
だが誠が思ったとおり素子からは翌日連絡が来ない。
今日は本社。
誠は朝素子にメッセージを送ったが未読。
本社の自分のデスクは仕事が山積みでそれを誠は面倒そうに片付けていく。
机の上に置いてあるスマートフォンが震える度に、誠はすぐにスマートフォンをとって中を見るが仕事のメール。
素子へ送ったメッセージを確認すればまだ未読。
まぁ昼休みになればとスマートフォンを見ていたら、肩を叩かれた。

「なーにずっとそわそわスマホ見てんだよ」

誠にニヤニヤと話しかけてきたのは、本社法務部でもう一人の弁護士である小暮道久。
黒髪、扱いにくい髪質ゆえ髪の毛はかなり短くしている。
彫りの深い顔立ちで、柔らかな印象の誠とはまた違って人気がある。

「定期連絡が来なくてさ」
「あの会社に誰か味方でも作ったわけ?
法務チームまだ信頼できないって言ってたじゃないか」

誠は顔を上げ、内緒、と意味深な顔をすると、小暮は呆れた顔になる。
そういうのは女に意味はあるだろうが、対男だとあまり意味は無い。
誠は、

「そういう小暮は例の件、進めてくれたんだよな?」
「進行中。
だいぶ証拠が溜まったし、何よりお前が直接彼女に関わった以上早めに気着つけたいだろ?」

誠は口角を上げ、

「当然」
「なら仕事にかこつけて彼女からの連絡待ちしないでその仕事の山、片付けてくれ」
「りょーかい」

既にバレていることに誠は笑う。

誠が会社近くのカフェで昼食をとっていると、素子から返信が来た。

『お疲れさまです』

という簡単な返事。
そんなのは誠も想定内だ。
すぐに誠は返事する。
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