天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~


車は高速に乗り、混まずに進んでいる。
誠は素子に会社になれてきたのか聞けば、覚えることが多くて大変だけれど嬉しいですと微笑んだ。

「簡単にご家族のこと聞いていたけど、妹さんは今日居るの?」
「いないはずです、週末は彼と過ごすのが定番のようなので」
「妹さんがいるのになんで素子に結婚をお母さんは迫るの?」

電話や二人になると自分の名前を呼ばれることになれない素子は、それに反応しそうなのを我慢して話し出す。

「学歴です」
「誰の?」
「本人と、その相手のです。
妹は短大卒で彼氏は大卒ですが母曰く立派な大学では無いと。
勤めているのも地元の中小企業というのが気に食わないようで」
「日本の9割以上は中小企業が占めているし、それらがあってこそなのにね」
「えぇ。
妹の彼氏が勤めるのは地元密着の古くからある会社です。
妹も頑張って資格を取り老人福祉施設で働いていて、明るい性格からとても皆さんに可愛がられているようで。
私からすれば二人とも立派だと思うのですが、母からすると周囲に自慢できないというのが嫌なのでしょう」
「お父さんはどうなの?」
「父は無関心です。
仕事人間で家にはいないことが多かったですし、私もあまり会話をしなくて」

黙ってしまった素子に、誠はどれだけ母からプレッシャーをかけ続けられていたのかと思う。
誠の兄も会社を背負う人間として子供の頃から父親に育てられ、誠はそれを補佐する人材というように扱われた。
反発して家を出て、今度は武器を持って帰ってきた。
きっと何をしても兄のようには認められない。
そういうむなしさを抱えている点では同志のようにも思える。
今はかなり自分に自信を持てるようになった。
だからこそ、素子にもっと自信を持って欲しい。
可愛がって甘えることを覚えさせたい。

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