天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~
誠は素子に会えないまま急遽二泊三日の出張になり、素子にメッセージを送った。
お土産何が良い?帰ったらデートしようと。
だが帰ってきた返事は、気をつけて行ってきて下さいのみ。
電話を掛けてみたが出ない。
時間は夜の十時過ぎ。
風呂だろうかと再度時間をおいてかけても出ない。
早めに寝たのかもと誠は留守電にメッセージを残し、電話を終えた。
そんな留守電に残される誠の声を素子は部屋で聞いていた。
自分を気に掛ける言葉の最後に、会いたいという言葉。
素子はその留守電の削除ボタンを押しそうになり、やめる。
今まで染みついた卑屈な性格は、簡単に変わることは出来ない。
誠の言葉を信じたい、だけれど信じて違った結果が待ち受けているのなら。
素子は膝を抱え、答えの出ない苦しみに飲み込まれそうになっていた。