天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~
「今までの女性はそういう事があったので嫌だったのですか?」
「全員とは言わないけどほぼそうだったね」
「私は全て見てきたわけじゃ無いですけど、誠さんの彼女たちに対する意見には反論したい部分があります」
真面目な顔で意見してくる素子に、誠はその頬を撫でながら、なに?と聞く。
「彼女たちは誠さんを知る最初の手段やまたはその要因として立場や肩書きを含めて安心できる部分と捉えたんだと思いますよ?」
「うん、だからそこが計算高いというか」
「相手を知るって難しいことだと思います。
好きだから色々知りたい。
そこに家のことや肩書きは知りたい相手の情報として大きいんです。
誠さんは大きな会社のご子息。
ならプレッシャーだってあってそれを耐えられる力がある。
弁護士という肩書きは、それを得るために努力した証し。
なら彼は努力できる人なのだろう。
そういうのは、誠さんをもっと知ることが出来る大切な情報なんだと思うんです。
だから今までの女性全てが打算だけで近づいたように思わないで下さい。
きっと誠さんを知りたくて、そこからしか話を聞けなかった人達だっているはずだから」
誠は素子の話を聞いて言葉を失っていた。
そんな風に考えた事なんて無い。
そしてそんな風な考えをするのは素子だからこそだ。
彼女が自分の今まで付き合った相手にすら気遣うのは、それにより不信感を抱いた自分に寄り添うため。
どこまで彼女は人が良くて優しいのだろう。
誠は素子の肩に顔を乗せると、強く抱きしめる。
「誠さん、苦しい」
「・・・・・・どうしたら、この思いを素子に伝えられるだろう」
少しだけ緩んだ誠の腕に、素子は身体を動かそうとする。