夢のまた夢では 終わらない夢
椅子の背に手を置いて微笑む彼の瞳の先にはもう選択の余地はなかった。
彼の意思に従うしかない。でも、私の本心がそう仕向けたってことはない?ひゃー、なんて厚かましい!
椅子に腰を下ろし、淹れたてのコーヒーを頂く。
彼の入れてくれたコーヒーはとんでもなく薫り高くおいしかった。
どこかの老舗のカフェで頂くような玄人の技法で淹れたんじゃないかっていうくらい。
聞くと、彼はコーヒー豆に拘りがあって、なかなか日本でも手に入らない豆を知り合いから譲ってもらっていると言っていた。
そんな上流な会話すらもだんだんと普通に受け入れるようになっている私って、相当に順応性があるのだろうか。
もしくは、とんでもない勘違い野郎なのかもしれないと思いながら、おいしいコーヒーを更に口に含んだ。
そして、ようやく彼に名前を聞くことができた。
彼の名は、【神楽 亮】。
年齢は三十七歳。どうりで大人の余裕と色気が半端なかったわけだ。
どこに勤めてるかまでは教えてくれなかったけれど、しょっちゅう海外に出張が入る仕事らしい。
そんな話をしながら、神楽さんはささっとカルボナーラを作りふるまってくれた。
「おいしいです!これ、本当に神楽さんの手作りですか?」
一口食べた瞬間、コーヒー以上の衝撃を受け目を丸くして正面に座る彼を見た。
「うん」
私もそこそこ料理はできる方だけど、こんな深い味はどうあがいたって出せない。
彼は、「それが何か?」というような表情で自分で作ったカルボナーラを豪快に口に運ぶ。
「おいしいです、今まで食べたどんなカルボナーラより」
「そう?素直に嬉しいな。料理は半分趣味なんだ」
こんなかっこいい上に料理まで作るなんて完璧にもほどがある。
「彼女さん幸せでしょうね。こんなおいしいお料理頂けるなんて」
「彼女は残念ながら今はいないよ」
「……あ」
調子に乗り過ぎたよね。そんなプライベートなことにたちっいったりして。
フォークを皿に置き項垂れたまま「すみません」と謝る。
だけど、こんな素敵な男性、彼女がいて不思議じゃないんだもの。
「どうしたの?そんなにしょんぼりすることはないよ」
顔を上げると、彼が優しく微笑んでいた。
「出会って間もないのに、個人的なこと聞いてしまった自分が情けなくって……」
「全然気にしないから大丈夫。それに、彼女がいたら、樹ちゃんを家に簡単に入れて食事までご馳走するわけないから」
さらっと言った言葉に胸の中心がドクンと大きく震えた。
なんだろう。今まで味わったことのないような気持ち。
これから神楽さんに彼女ができたら、こんな風に一緒に過ごすこともないってこと。
そして、
まだ見ぬ彼女を既に大切な存在として位置づけているような彼の言葉にドキドキしていた。
彼の彼女になる人を心から羨ましく思う。
彼の意思に従うしかない。でも、私の本心がそう仕向けたってことはない?ひゃー、なんて厚かましい!
椅子に腰を下ろし、淹れたてのコーヒーを頂く。
彼の入れてくれたコーヒーはとんでもなく薫り高くおいしかった。
どこかの老舗のカフェで頂くような玄人の技法で淹れたんじゃないかっていうくらい。
聞くと、彼はコーヒー豆に拘りがあって、なかなか日本でも手に入らない豆を知り合いから譲ってもらっていると言っていた。
そんな上流な会話すらもだんだんと普通に受け入れるようになっている私って、相当に順応性があるのだろうか。
もしくは、とんでもない勘違い野郎なのかもしれないと思いながら、おいしいコーヒーを更に口に含んだ。
そして、ようやく彼に名前を聞くことができた。
彼の名は、【神楽 亮】。
年齢は三十七歳。どうりで大人の余裕と色気が半端なかったわけだ。
どこに勤めてるかまでは教えてくれなかったけれど、しょっちゅう海外に出張が入る仕事らしい。
そんな話をしながら、神楽さんはささっとカルボナーラを作りふるまってくれた。
「おいしいです!これ、本当に神楽さんの手作りですか?」
一口食べた瞬間、コーヒー以上の衝撃を受け目を丸くして正面に座る彼を見た。
「うん」
私もそこそこ料理はできる方だけど、こんな深い味はどうあがいたって出せない。
彼は、「それが何か?」というような表情で自分で作ったカルボナーラを豪快に口に運ぶ。
「おいしいです、今まで食べたどんなカルボナーラより」
「そう?素直に嬉しいな。料理は半分趣味なんだ」
こんなかっこいい上に料理まで作るなんて完璧にもほどがある。
「彼女さん幸せでしょうね。こんなおいしいお料理頂けるなんて」
「彼女は残念ながら今はいないよ」
「……あ」
調子に乗り過ぎたよね。そんなプライベートなことにたちっいったりして。
フォークを皿に置き項垂れたまま「すみません」と謝る。
だけど、こんな素敵な男性、彼女がいて不思議じゃないんだもの。
「どうしたの?そんなにしょんぼりすることはないよ」
顔を上げると、彼が優しく微笑んでいた。
「出会って間もないのに、個人的なこと聞いてしまった自分が情けなくって……」
「全然気にしないから大丈夫。それに、彼女がいたら、樹ちゃんを家に簡単に入れて食事までご馳走するわけないから」
さらっと言った言葉に胸の中心がドクンと大きく震えた。
なんだろう。今まで味わったことのないような気持ち。
これから神楽さんに彼女ができたら、こんな風に一緒に過ごすこともないってこと。
そして、
まだ見ぬ彼女を既に大切な存在として位置づけているような彼の言葉にドキドキしていた。
彼の彼女になる人を心から羨ましく思う。