夢のまた夢では 終わらない夢
1.
1.


……ピピピ……

ピピピーピピピーピピピー

んん~……

目を閉じたまま布団から右腕だけ出して枕もとのサイドテーブルを探り、その手に触れたスマホを掴んだ。

サイドのボタンを押し、ひとまずこのうるさい音から逃れる。

大きく伸びをすると、ゆっくりと上体を起こし目を開けた。

目に被さった前髪をかき上げ、ベッドに立ち上がりラジオ体操第一を始める。

毎朝の日課だ。

今朝の夢見は悪くない。

ぼんやりとしか覚えていないけれど、ものすごくいい夢だったような。

覚えているのは、宮殿のような場所と大きな扉。

体操を終えると、覚えている間にスマホで夢占いの検索をする。

夢って、警告とか今の自分の状態が反映されたりするから、覚えてる時はこうしていつも夢占いと照合していた。

宮殿、宮殿……と、【野心、金銭面が恵まれる運気】。

へー、全く野心なんてないけどね。しがないOL生活も早や十年目を迎え、今年三十二になろうってのに。

とにかく、このまま平穏に今の職場で働かせてもらって、今の生活をキープできればそれでいい。

だけど、金銭面に恵まれるってのは放っておけない。

宝くじでも買おうかしら。

スマホを片手に洗面所に向かい、歯ブラシを口にくわえた。

あと、『大きな扉』も調べなくちゃね。

【扉の向うは未来。あなたに無限大の可能性が用意されてる】。

何、これ最高じゃない?

どんな素晴らしい未来と可能性が待っているのかしら。想像するだけでワクワクする。

< 2 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop