夢のまた夢では 終わらない夢
私、本条 樹。樹だなんてまるで男みたいな名前だと小学生の頃から皆にからかわれていた。
樹という名前だから、若干男らしく育ってしまったんだと思っている。
彼氏だって高校生の時、唯一一カ月だけ付き合っただけ。
それ以来、三十過ぎても結婚話なんてこれっぽっちもなかった。
私の根底に結婚なんかしなくても、楽しい飲み仲間や美咲みたいに有能な友人がいれば寂しくはないという思いがある。
そもそも結婚にはいいイメージはないし、とびきりの男性なんてこの世に存在しないと思ってるから……。
電車に揺られながら、久しぶりに五年前に病気で他界した母のことを思い出す。
幼い私を抱え、一人で育て上げてくれた優しくて気丈な母だった。
普段は、食べることか友達と遊ぶことか趣味の囲碁のことしか頭にないんだけど、どうしたもんだか。
しばらくお墓参りもしてなかったよな。近々行かなくちゃ。
そんなことを思いながらようやく目的地周辺にたどり着く。
さてと。確か、この辺りだったよね。
美咲からもらった住所で地図を検索しながら、ゆっくりと進んでいった。
「ここだ」
到底住宅街とは程遠い都心のど真ん中にズドーンと空まで突き抜けるような存在感で、彼女の住むマンションがそびえ立っていた。
品のいい焦げ茶色のシックなマンション。
上層階は、明らかに一軒が半端なく大きいということが見て取れる。
美咲もよくこんなマンション買えたもんだよ。私には一生かかったって無理だ。
マンションを見上げながら、ふぅーと息を吐いた。
そして自分のワンピースの裾を見つめながら思う。
このワンピースだって、ボーナスが出た時、初めてブランド店に入店し、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ったものだ。
自分とは無縁の世界が目の前に存在していることに少しの違和感と若干の劣等感を感じながらマンションの入り口に向かった。
しかしながら、このマンションは重厚なセキュリティのため、簡単にその入り口を開けてはくれないシステムになっている。
まずは、彼女の部屋番号を押して、美咲の許可がなければ開かないようになっていると聞かされていた。
プッシュボタンで美咲の部屋番号を打とうとしてふと固まる。
樹という名前だから、若干男らしく育ってしまったんだと思っている。
彼氏だって高校生の時、唯一一カ月だけ付き合っただけ。
それ以来、三十過ぎても結婚話なんてこれっぽっちもなかった。
私の根底に結婚なんかしなくても、楽しい飲み仲間や美咲みたいに有能な友人がいれば寂しくはないという思いがある。
そもそも結婚にはいいイメージはないし、とびきりの男性なんてこの世に存在しないと思ってるから……。
電車に揺られながら、久しぶりに五年前に病気で他界した母のことを思い出す。
幼い私を抱え、一人で育て上げてくれた優しくて気丈な母だった。
普段は、食べることか友達と遊ぶことか趣味の囲碁のことしか頭にないんだけど、どうしたもんだか。
しばらくお墓参りもしてなかったよな。近々行かなくちゃ。
そんなことを思いながらようやく目的地周辺にたどり着く。
さてと。確か、この辺りだったよね。
美咲からもらった住所で地図を検索しながら、ゆっくりと進んでいった。
「ここだ」
到底住宅街とは程遠い都心のど真ん中にズドーンと空まで突き抜けるような存在感で、彼女の住むマンションがそびえ立っていた。
品のいい焦げ茶色のシックなマンション。
上層階は、明らかに一軒が半端なく大きいということが見て取れる。
美咲もよくこんなマンション買えたもんだよ。私には一生かかったって無理だ。
マンションを見上げながら、ふぅーと息を吐いた。
そして自分のワンピースの裾を見つめながら思う。
このワンピースだって、ボーナスが出た時、初めてブランド店に入店し、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ったものだ。
自分とは無縁の世界が目の前に存在していることに少しの違和感と若干の劣等感を感じながらマンションの入り口に向かった。
しかしながら、このマンションは重厚なセキュリティのため、簡単にその入り口を開けてはくれないシステムになっている。
まずは、彼女の部屋番号を押して、美咲の許可がなければ開かないようになっていると聞かされていた。
プッシュボタンで美咲の部屋番号を打とうとしてふと固まる。