夢のまた夢では 終わらない夢
開かれた扉から一歩足を踏み入れると、床一面大理石の広い玄関から伸びた廊下の先に明るい空間が見えた。
白を基調とした壁の向うにはきっとびっくりするくらい大きなベランダがあって、都心を一望できるはず!
自分の妄想に興奮する気持ちを悟られないよう、下唇を噛みしめ、廊下の先を急いだ。
「うわー、きれい!」
思わず叫んでしまうほどの想像通りのリビング、いや想像以上に広く明るいリビングが目の前にあった。
リビングにはいかにも上質なベージュの革張りのソファーが君臨するように置かれ、壁に取り付けられたテレビは見たことがないくらいに大きい。
そして何よりも南側に面したベランダといったら!
床から天井サイズの大きなガラス窓から明るい日差しがリビング一面に差し込んでいた。
「ベランダから外に出てみる?」
両手を胸に当て、明らかに感動している私を見た彼は優しく促した。
私は大きく頷き、案内されるがまま外に出た。
最上階だけあって風は強い。
でもその眼下に広がる都心の風景はもったいないくらいの絶景だった。
色んな展望台に行ったことはあるけれど、こんな景色を独り占め、いや二人占めしたことは初めての経験。
「すごいです。毎日こんな景色見て過ごせるなんて最高ですよね」
言ってしまってから、天上界に住むような人に言うにはあまりにも稚拙な表現だったのではないかと恥ずかしくなる。
「そんなに感激してくれて俺も嬉しいよ」
彼も眼下の景色に目をやりながら口元を緩める。
よかった……名前も素性もわからないままだけど、きっとこの人はいい人に違いない。
彼は少し長めの前髪をかき上げながら私の方に顔を向ける。
「君の名前、聞いてもいい?」
「あ、はい。紹介遅れました。本条 樹です」
「本条 樹……樹ちゃんか。素敵な名前だね」
素敵な名前だなんて、初めて言われた。気持ちが高揚して心臓が大きく震えている。
そして、恐る恐る尋ねた。
「あの、私もあなたのお名前、教えて頂いてもいいですか?」
白を基調とした壁の向うにはきっとびっくりするくらい大きなベランダがあって、都心を一望できるはず!
自分の妄想に興奮する気持ちを悟られないよう、下唇を噛みしめ、廊下の先を急いだ。
「うわー、きれい!」
思わず叫んでしまうほどの想像通りのリビング、いや想像以上に広く明るいリビングが目の前にあった。
リビングにはいかにも上質なベージュの革張りのソファーが君臨するように置かれ、壁に取り付けられたテレビは見たことがないくらいに大きい。
そして何よりも南側に面したベランダといったら!
床から天井サイズの大きなガラス窓から明るい日差しがリビング一面に差し込んでいた。
「ベランダから外に出てみる?」
両手を胸に当て、明らかに感動している私を見た彼は優しく促した。
私は大きく頷き、案内されるがまま外に出た。
最上階だけあって風は強い。
でもその眼下に広がる都心の風景はもったいないくらいの絶景だった。
色んな展望台に行ったことはあるけれど、こんな景色を独り占め、いや二人占めしたことは初めての経験。
「すごいです。毎日こんな景色見て過ごせるなんて最高ですよね」
言ってしまってから、天上界に住むような人に言うにはあまりにも稚拙な表現だったのではないかと恥ずかしくなる。
「そんなに感激してくれて俺も嬉しいよ」
彼も眼下の景色に目をやりながら口元を緩める。
よかった……名前も素性もわからないままだけど、きっとこの人はいい人に違いない。
彼は少し長めの前髪をかき上げながら私の方に顔を向ける。
「君の名前、聞いてもいい?」
「あ、はい。紹介遅れました。本条 樹です」
「本条 樹……樹ちゃんか。素敵な名前だね」
素敵な名前だなんて、初めて言われた。気持ちが高揚して心臓が大きく震えている。
そして、恐る恐る尋ねた。
「あの、私もあなたのお名前、教えて頂いてもいいですか?」