冷徹上司の過剰な愛
そんなことを考えていると、「なんだか余裕そうだね…?」と口角を上げた難波さんに思わず苦笑い。


別に余裕なわけじゃ…。それを言えば、難波さんだっていつも余裕そう。


いっぱいいっぱいなのはいつもわたしだけ。


その悔しさは以前からずっとどこかにあって、その悔しさをどうにかしたいと思っていた。


わたしと同じように余裕がない難波さんを見てみたい。



「…浬、……っ、」



あと数センチで唇が触れるというタイミングで名前を呼ぶと、難波さんの行動が静止した。


至近距離で瞳が絡んだまま…という時間が惜しく思い、そのまま唇を重ねると、難波さんがしてくれるようなキスをしてみる。


上手くできている自信なんて全然ないけど、それでもわたしなりに必死だった。



「っ、…あのん…どうしたの?」



と無理矢理唇を離したのは難波さんのほう。



「……いつもわたしだけ余裕ないから悔しくて…。難波さんにももっとドキドキしてほしい…です。」


「…………余裕なんてないよ。僕はあのんのことになると余裕なんてなくなる。いっぱいいっぱいだよ。」


「…見えないです。いつも涼しい顔してます。」


「涼しい顔って…。でもそう見えてたなら良かった。」


「良かった?」


「うん。だってあのんにはダサい姿見せたくないからね。」
< 141 / 230 >

この作品をシェア

pagetop