冷徹上司の過剰な愛
「あのん……。」



そんなわたしにお父さんは何を言うでもなく、ただ背中を摩り続けてくれていた。



「ごめんな、あのん。父さんがもっと気をつけて母さんのこと見ておけばこんなことにはならなかったはずなのに……ごめんな。」


「……っ、…お父さんのせいじゃないよ。お父さんは悪くないよ…。誰のせいでもない。」



お母さんがこうなったのは誰のせいでもない。


……いや、それは違うのかもしれない。


電車に乗れば、実家から会社には通えるところをわたしのわがままで家を出た。それに、近いからという理由で実家に帰ることを避けていた部分もある。


いつでも帰れるから、って…。



「……母さんに会ってやって。あのんのこと待ってる。」


「……うん。」



お父さんの後に続き病室に入ると、横たわるお母さんの姿がすぐに見えた。



「お母さん……?お母さんっ。」



静かに眠るお母さんは痩せたように見えるし、やつれても見える。


思えばこの数ヶ月お母さんやお父さんに会うことはなかった。



「親不孝な娘でごめんね。これからいっぱいいっぱい親孝行するから目覚ましてよ…お母さんっ。」



……お母さん…話したいこともあるし、会わせたい人だって出来たんだよ…?だから起きてよ…。
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