冷徹上司の過剰な愛
8章

弟さん

次の日、退院の手続きを済ませ、お母さんの病院へと向かった。


相変わらずお母さんは眠ったまま。でも、その寝顔はどこか穏やかにも見える。


なんだかもうそろそろ起きてくれそうな予感。



「お母さん。また明日来るね。」



病室を出たタイミングでお父さんと入れ違いになり、昨日の今日ということもあり、体調のことを心配された。



「ちゃん食べて、よく寝るんだぞ。仕事もほどほどにな?」


「ん。分かった。また明日来るから。」



そう言い残し病院を後にすると、その足でスーパーに立ち寄り、スマホにメモした食材をカゴに入れていく。



「こんなもんかな。」



食材でいっぱいになったカゴはかなり重く、買い過ぎ?と不安になる。…が、そのままレジを通し、難波さんのマンションへと向かった。


久しぶりの難波さん宅は相変わらず綺麗で、大好きな匂いも健在で胸が高鳴る。


難波さんが帰って来るまで約3時間。勝手に申し訳ないけどキッチンを借り、スマホを見ながら慣れない料理を丁寧に作っていく。



「…出来たっ!…我ながら上出来♪」



味見もしたし、栄養バランスも見映えもそれなり。わたしもやれば出来ちゃうのかも?なんて調子に乗っていると、チャイムが鳴り響いた。


そのチャイムが全ての始まりだということを、この時のわたしはまだ知らない。
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