冷徹上司の過剰な愛
不安な気持ちを抱えたまま、とりあえずチャイムを押してみる。


………ん?留守??


もう一度チャイムを鳴らすも応答なし。


22時過ぎてるのにどこに行ってるんだろう?もしかして白鳥さんと会ってる…?


このまま待つわけにも行かないと踵を返した時、エントランスのドアが開き、こっちに向かって歩いて来る難波さんの姿が見えた。


かなりラフな格好をした難波さんの片手にはコンビニ袋が見え、もう片手にはスマホ。それに夢中の難波さんはわたしに気づく気配がない。


そのまま真っ直ぐわたしの側まで歩いて来た難波さんがやっと顔を上げた。



「あのん…?」


「……難波さん…こんばんは。」


「どうしたの?来るって連絡くれてた?…ごめん、待ってたよね。寒かったでしょ?」


「…帰ります。難波さんを一目見たかっただけなので。おやすみなさい。」



難波さんの姿を見た瞬間、張っていた気が一気に切れた。



「待って、」



出て行こうとしたわたしの手を掴むなり、難波さんの優しい瞳がわたしを捉える。



「…このまま帰せない。とりあえず中に入ろ。」
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