冷徹上司の過剰な愛
「お風呂沸かすから待ってて。」



好き、という気持ちの返事もしてくれないまま、難波さんはリビングから姿を消した。


…やっぱりそうだよね。難波さんがわたしを好きなんて絶対ないと思ってたもん。……思ってた、よ…?


なのに、どうしてこんなに胸が苦しいんだろう。


……難波さんと気持ちが同じだったら、ってなんで思ってしまってたんだろう。


溢れ出る涙が邪魔だ。難波さんが戻ってくるまでに泣きやまないと…!


とその時、リビングのドアが開かれ、咄嗟に背中を向けた。



「あのん…?なんで泣くの?」



なんで、って…そこには触れないでもらいたい。全部難波さんのせいじゃん。全部全部……難波さんが悪いのにぃ…。



「あのん?こっち向いて?」



いつの間にか背後まで来ていた難波さんにドキッとするも、首を振って見せた。


振り向けない…こんな顔……見せたくない。これ以上難波さんの中のわたしを下げたくない。



「渡しておきたい物があるんだけど、あのんが振り向いてくれないなら渡せないなぁ。」



渡しておきたい物…?うわ、気になるぅ〜…。
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