冷徹上司の過剰な愛
小さく後退りするも、このエレベーター内ではすぐに行き場を失う。背中に触れた壁に息を飲むと同時に心拍数が急激に上昇。


そんなわたしを見下ろす難波さんはどこか楽しそうに口角を上げているから悔しいんだよね。


両手を壁につき、その間に閉じ込められたわたしは身動き取れない。


こんなの難波さんの思惑通りじゃん……これまた悔しい。


とその時、タイミング良くドアが開いたことをいいことに、隙を見て難波さんから抜け出すことに成功!


早足でエレベーターから降り、火照る顔を両手で仰ぐ。


…暑い…暑すぎぃ。さっきまで冷え切っていた体が嘘のように今は火照って暑い。全部難波さんのせいだ。


当の難波さんは数歩後ろを涼しい顔して歩いてて、それに対して再び悔しさが押し寄せた。


…難波さんには勝てない。いや、もちろん勝てるなんて思ってないよ。思ってないけど……たまにはドキドキさせてみたいって思う。


会社では冷徹で、完璧な難波さんのことを……ドキドキさせてみたらどうなるんだろう?…わたしには難しいだろうけど。


いつの間にか隣まで追いついていた難波さんをこっそり盗み見。


…かっこいいなぁ。この角度から見れる難波さんの横顔は多分わたしだけの特権。=彼女の特権ってやつ。


…彼女……難波さんはどうしてわたしを彼女にしたんだろう?
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