冷徹上司の過剰な愛
正直、こんなにも仕事が終わってほしくない、と思ったのは初めて。こういう時に限って残業がないんだよね。


それにさ…、



「合鍵使ってなんて言われても…。」



帰り際、難波さんは上の人に呼ばれて行ってしまった。その後すぐに、【合鍵使って先に入ってて。】と連絡が入った。


そんなこんなで初めて合鍵を使い、難波さん宅にお邪魔した。



「難波さんの匂いがする…。」



玄関入ってすぐから難波さんの匂いが鼻を掠め、胸がぎゅっと締め付けられる。


っ、なんか……悪いことしてるような気分だ。


難波さんが居ないリビングはものすごく静かで、次第に寂しくなる。


早く帰って来ないかな。なんて思ってしまうほど寂しい。


壁に掛かる時計の秒針だけが響くリビングで待つこと1時間近く…



「あのん…?」



とリビングに姿を現した難波さんにパッと気持ちが晴れる。


けど、ここは笑顔を向けない。
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