婚約破棄されたので、国の外れで錬金術姫になりました!~自由になった途端、隣国の王太子や精霊王や竜族から愛されています~
第一章
青い空、そこに流れゆく白い雲。
心地よく私の頬を撫でていく風は、草や木々の青い香りを含んでいる。
「王都に比べて、なんて開放的なの!」
私がいるのは、ちょうど私達の国ノルデン王国と、南のサウザン王国を隔てる国境線のあたり。
そうといっても、その国同士で仲が悪いなんてことはない。
だから、国境を勝手に越えようとする者が現れやすい場所に、監視兵がいる程度で、至って平和だ。
とはいっても、もちろん他国同士という建前もあるので、軍備は怠らないのだけれど。
私の領は、領土の三分の二を森や平野、西側三分の一が砂漠で占められている。海に面している地域もある。だから、陸路でも海路でも貿易の出来る、非常に恵まれた土地といえるだろう。
ただし、すでにある砂漠が徐々にその範囲を広げていることに関しては若干頭が痛いところだ。けれど、それを除けば、基本的に自然に恵まれた良い土地だ。
そんな懐かしい故郷の景色を眺めていると、男性から声をかけられた。
「「エリス様。お帰りになっていたのですか」」
見張りの兵士達だ。
彼らにも、私はすっかり顔が知られている。
そんな、兵士達が気安く私に声をかけてくれるのも懐かしい。
昔は子供の頃から馬で遠乗りしてばかりいたからね。
女だてらに、「お兄様達と同じように馬にまたがって乗りたい」と駄々をこね、とうとう、男性用の乗馬服に女性のドレスのスカートを巻き付けたような、私専用の乗馬服を作らせた経緯がある。
だから、私は乗馬するときは、基本それをいつも着ている。
勿論、王都では乗馬自体が禁止されていたけれど。
窮屈でしきたりにうるさい王都は、女性が跨がって乗馬なんてありえないんですって。頭が硬いわよね。全く。
とと。話が少しずれたかしら。
私は、声をかけてくれた兵士達に警備の任への感謝も込めて微笑みかける。
「おつかれさま。私は、さっき帰って来られたばかりなのよ。窮屈な王都じゃないから、久々に領土で遠乗りがしたくって」
互いに肩をすくめて笑い合って、彼らとは別れた。手を振れば、気安く手を振り返してくれた。そんな素朴で優しい領だ。
私は彼らのいた場所からさらに移動をする。
さらに奥の茂みへと進む。そこを見渡せば、奥にはうっそうと茂る森があり、そこへ忍び込めばベリーなどの森の恵みを味わうこともできる。もちろん、深入りは禁止ね。
そして、私がまた馬を折り返させて、平原へと移動する。馬にまたがってあたりを眺めているこの場所は、広々とした丘だ。野の花が咲き乱れているから、野原といってもいいだろう。
「やっと帰って来られたのね!」
私は、まるで自由という言葉を表すかのように広々とした景色を謳歌する。
私は馬に命じて足を止めさせた。
「私は自由よ!」
大きな声で叫んだ。
馬上で、広野を見渡し、両手を上げて。
胸は開放感でいっぱいだ。
――ああ、そうだ。彼にも連絡しておこう。
内ポケットにしまっておいた簡易な筆記用具でメモを書き、私専用の魔道伝書鳩のリルルの足にその紙を結わく。
『ユリウスへ
私、故郷に帰ってきたの。自由になったわ!』
そう、幼い日に出会った彼にしたためて。
『また会いたい』とは、自分からは少し気恥ずかしくて書けなかったけれど。
「さあ、届けてきてちょうだい!」
リルルを解放すると、彼女は青い空に飛び去って、溶けて消えていった。
心地よく私の頬を撫でていく風は、草や木々の青い香りを含んでいる。
「王都に比べて、なんて開放的なの!」
私がいるのは、ちょうど私達の国ノルデン王国と、南のサウザン王国を隔てる国境線のあたり。
そうといっても、その国同士で仲が悪いなんてことはない。
だから、国境を勝手に越えようとする者が現れやすい場所に、監視兵がいる程度で、至って平和だ。
とはいっても、もちろん他国同士という建前もあるので、軍備は怠らないのだけれど。
私の領は、領土の三分の二を森や平野、西側三分の一が砂漠で占められている。海に面している地域もある。だから、陸路でも海路でも貿易の出来る、非常に恵まれた土地といえるだろう。
ただし、すでにある砂漠が徐々にその範囲を広げていることに関しては若干頭が痛いところだ。けれど、それを除けば、基本的に自然に恵まれた良い土地だ。
そんな懐かしい故郷の景色を眺めていると、男性から声をかけられた。
「「エリス様。お帰りになっていたのですか」」
見張りの兵士達だ。
彼らにも、私はすっかり顔が知られている。
そんな、兵士達が気安く私に声をかけてくれるのも懐かしい。
昔は子供の頃から馬で遠乗りしてばかりいたからね。
女だてらに、「お兄様達と同じように馬にまたがって乗りたい」と駄々をこね、とうとう、男性用の乗馬服に女性のドレスのスカートを巻き付けたような、私専用の乗馬服を作らせた経緯がある。
だから、私は乗馬するときは、基本それをいつも着ている。
勿論、王都では乗馬自体が禁止されていたけれど。
窮屈でしきたりにうるさい王都は、女性が跨がって乗馬なんてありえないんですって。頭が硬いわよね。全く。
とと。話が少しずれたかしら。
私は、声をかけてくれた兵士達に警備の任への感謝も込めて微笑みかける。
「おつかれさま。私は、さっき帰って来られたばかりなのよ。窮屈な王都じゃないから、久々に領土で遠乗りがしたくって」
互いに肩をすくめて笑い合って、彼らとは別れた。手を振れば、気安く手を振り返してくれた。そんな素朴で優しい領だ。
私は彼らのいた場所からさらに移動をする。
さらに奥の茂みへと進む。そこを見渡せば、奥にはうっそうと茂る森があり、そこへ忍び込めばベリーなどの森の恵みを味わうこともできる。もちろん、深入りは禁止ね。
そして、私がまた馬を折り返させて、平原へと移動する。馬にまたがってあたりを眺めているこの場所は、広々とした丘だ。野の花が咲き乱れているから、野原といってもいいだろう。
「やっと帰って来られたのね!」
私は、まるで自由という言葉を表すかのように広々とした景色を謳歌する。
私は馬に命じて足を止めさせた。
「私は自由よ!」
大きな声で叫んだ。
馬上で、広野を見渡し、両手を上げて。
胸は開放感でいっぱいだ。
――ああ、そうだ。彼にも連絡しておこう。
内ポケットにしまっておいた簡易な筆記用具でメモを書き、私専用の魔道伝書鳩のリルルの足にその紙を結わく。
『ユリウスへ
私、故郷に帰ってきたの。自由になったわ!』
そう、幼い日に出会った彼にしたためて。
『また会いたい』とは、自分からは少し気恥ずかしくて書けなかったけれど。
「さあ、届けてきてちょうだい!」
リルルを解放すると、彼女は青い空に飛び去って、溶けて消えていった。
< 1 / 10 >