【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編 「横浜の夜は更けて」
「じゃ、行こうか」
 そう言って亮介さんはわたしの手を取った。

 そう。これから、わたしたちは横浜で過ごす予定を立てていた。

 初めてのデートらしいデート。
 中華街で食事をして、馬車道や山下公園を散策して……
 そして亮介さんが予約してくれたホテル・ニュー・グランドに一泊する。

「急な話だったし週末なのに、よく取れたね、部屋」と、わたしが訊くと、

 亮介さんはさらっと「ホテルのマネージャーが知り合いなんだ。4年半想いつづけた彼女と晴れて付き合うことになったっていったら、一肌脱いでくれてね」

 そう言って、ウインクする。

 どれだけ顔が広いんだろう、この人。

 それにわたしとのこと、知り合いみんなに話してるってこと?

 ちょっと恥ずかしい気がするけれど、まったく悪びれずに嬉しそうな顔で言われると、もう何も言えなくなってしまう。
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