【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編 「横浜の夜は更けて」
そして、反対側の隣の席には橋本さん。
わたしは橋本さんに顔を寄せ、歓声に負けないよう大きな声を出した。
「すごかったですねー。シェイクスピアのお芝居は初めてで、難しいのかと思ってたんですが、すっかり惹き込まれてしまいました」
そう話しかけると橋本さんは「ありがとう……」と一言。
その瞳が潤んでいる。
あ、しばらく、そっとしておいてあげなきゃ。
ゆっくりと感慨に浸れるように。
自分の夫の演技が、これほど多くの人に認められた、貴重な瞬間なのだから。
榊原宗介さんは国民的イケメン俳優。
これまではテレビなどの映像の仕事がメインだったから、主役をつとめるこの舞台は彼にとって大きな挑戦。
それだけに橋本さんの不安も大きかったのだと思う。
本来なら、毎日でも通って愛する人の演技を見守っていたいはず。
でも、宗介さんは今、まさに旬の、売り出し中の俳優。
ふたりが夫婦であることは、事務所の方針で秘密にされている。
なので、橋本さんは、今日は奥さんとしてではなく、亮介さんの会社の同僚として訪れていた。
わたしは橋本さんに顔を寄せ、歓声に負けないよう大きな声を出した。
「すごかったですねー。シェイクスピアのお芝居は初めてで、難しいのかと思ってたんですが、すっかり惹き込まれてしまいました」
そう話しかけると橋本さんは「ありがとう……」と一言。
その瞳が潤んでいる。
あ、しばらく、そっとしておいてあげなきゃ。
ゆっくりと感慨に浸れるように。
自分の夫の演技が、これほど多くの人に認められた、貴重な瞬間なのだから。
榊原宗介さんは国民的イケメン俳優。
これまではテレビなどの映像の仕事がメインだったから、主役をつとめるこの舞台は彼にとって大きな挑戦。
それだけに橋本さんの不安も大きかったのだと思う。
本来なら、毎日でも通って愛する人の演技を見守っていたいはず。
でも、宗介さんは今、まさに旬の、売り出し中の俳優。
ふたりが夫婦であることは、事務所の方針で秘密にされている。
なので、橋本さんは、今日は奥さんとしてではなく、亮介さんの会社の同僚として訪れていた。