【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編 「横浜の夜は更けて」
「ちょっと、兄貴に顔出しとくか」
 そう言って、亮介さんは内ポケットからバックステージパスを取り出した。

 えっ、楽屋を訪れることができるの⁉︎

 そんなことはもちろん生まれてはじめての経験で、ちょっと興奮してしまう。

 楽屋口の前に行くと、大勢のファンが出待ちをしていた。
 亮介さんはすたすたと女性たちの間を縫ってゆく。
 わたしと橋本さんは、長身の亮介さんの後ろに隠れるようについていった。

「ねえ、ちょっとあの人、宗様にそっくりじゃない?」
「弟かな、噂の」

 亮介さんを見て、何人かのファンが小声で囁き合っている。

 そんな彼女たちを横目で見ながら、亮介さんは扉の前に立っているスタッフにパスを見せた。

 女性たちの羨望の視線が背中に刺さる、刺さる……
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