【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編 「横浜の夜は更けて」
ドアの内側には長い廊下が続いていた。

 わたしは、思わずきょろきょろと辺りを見回してしまう。
 雑然とした雰囲気のなか、キャストやスタッフが慌ただしく行き交っている。

 廊下の両側には、たくさんの小部屋が並んでいて、ドア横には「誰々様」と大きな文字で書かれていた。

「お、ここだ」
 亮介さんが立ち止まった。
 宗介さんは主役なので、もちろん個室の楽屋があてがわれていた。

 ノックをすると、はいと返事があり、40代ぐらいの女性マネージャーさんが現れた。
「弟です。取り次いでもらえますか」
 その声を聞きつけて、奥から「おう、入れよ」と声がした。

 胡蝶蘭の鉢植えがずらりと並ぶ二間続きの10畳ほどの広さの楽屋だった。 
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