【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編 「横浜の夜は更けて」

「あの、ハムレットが友人ホレイショーに抱かれて死んでゆくラストシーンでは、思わず泣いてしまいました」

　わたしの言葉に、ふっと笑みを漏らしたその顔が麗しすぎて、思わず頬を赤らめてしまう。

　そんなわたしの様子を見て、亮介さんはすかさず文句を言う。

「兄貴、いつまで奈月の手、握ってんだよ。それに、そんな必殺営業用スマイル、繰りだすなって」
　亮介さんは、わたしの肩に腕を回して、強い力で自分のほうに抱き寄せた。
宗介さんは「お前さあ、彼女が大事なのは知ってるけど、独占欲、強すぎだろ」とぷっと吹き出している。

「いや、油断ならないからな、兄貴は」
「バーカ。俺は郁美一筋だよ。って、何ノロケ合ってるんだろうな、俺たち。兄弟揃って」