【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編 「横浜の夜は更けて」
 そのとき、ノックが聞こえた。
 ドアの向こうからマネージャーさんの大きな声が聞こえてきた。

「東洋テレビの杉田さんがご挨拶にお見えになりました」

「悪い、少しだけ待ってもらって。すぐそっち行くから」と宗介さんも負けずに大声で答えた。

「じゃあ、そろそろ行くわ」
 と、亮介さんは言う。

「おう、ありがとな。今度、うちに遊びに来いよ。奈月さんと一緒に」
 わたしはぺこりと頭を下げた。

 橋本さんは「宗。これから打ち上げよね。どうせオールナイトだろうけど、もし帰るなら連絡して」と言った。

「わかった。ごめんな。本当は来てほしいんだけど。打ち上げで一番一緒に祝いたいのは郁美だから」

 橋本さんは微笑んで、それから宗介さんの頬を軽くつねった。
「そんな、できもしないこと言わないで」

 それから彼女はねだるように上を向いた。

「郁美……」

 宗介さんはそれに応えて軽くキスすると、「明日、郁美も休みだろ? 俺もやっとオフもらえたから、そのときゆっくり……な」と囁いた。
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