一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
───そして。
春。海の近くに佇む、ガラス張りのチャペル。
今日は私と彼方さんの結婚式だ。
玲花が産まれて、しばらくは三時間おきの授乳やおむつ替えでまともに眠ることすらままならなかったものの、半年も経てばほんの少しだけ楽になった。
悩まされていた夜泣きも少し落ち着いてきて、まとまった睡眠時間はまだ満足には取れていないけれど、身体が少し慣れてきたようだ。
少しずつ式の準備を進めて、ようやく今日を迎えることができた。
「美玲、おめでとう」
「静香。本当にありがとう」
控室に顔を出しに来てくれた静香に、何度もお礼を言う。
「玲花ちゃんは?」
「お母さんが見てくれてる」
「そっか、良かった」
玲花が泣くかもしれないから、挙式に招待したのは身内とそれに準ずる近しい人だけ。
大切な人達に見守られながら式を挙げられるなんて、私は何て幸せ者なんだろうと思う。
「あの時はどうなることかと思ってたけど。悩んでたのが嘘みたいに今幸せそうで、安心した」
「静香のおかげでこうやって結婚できたし、玲花にも会えた。本当に感謝してるよ」
静香からの助言がなければ、私はどうなっていたかわからない。彼方さんと結ばれることもなかっただろうし、玲花だってこの世に生を受けていたかどうかも定かではない。
静香のおかげで今の幸せがあるのだ。
「やだ、やめてよ。そんな素直にお礼言われたら恥ずかしいじゃん」
照れ臭そうな静香に、私も笑う。
プリンセスラインが華やかな純白のウエディングドレス。
同じ色のヴェールが、神聖な気持ちにさせてくれた。
世の女性たちの夢、とはよく言ったものだ。
確かにこれを着ると、自分がお姫様になったように思えてしまうから不思議だ。
「……美玲さん」
「彼方さん」
もうすぐ係の人に呼ばれるという頃。先にチャペルに向かった静香と入れ替わるように、彼方さんも準備が終わったのか私の控室に来てくれた。
ライトグレーのタキシードが眩しい。
長い脚が強調されて、隣に並ぶのも躊躇してしまうほどのスタイルの良さ。
ただでさえかっこよくてキラキラしているのに、今日は一段とかっこよく、素敵に見えた。