一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
「僕なら、貴女に寂しい思いはさせません」

「……え?」


聞き返すものの、それには答えてくれない。

ビー玉みたいな瞳は先程よりも熱を帯びていて、キラキラというよりもギラギラと言った方が正しそうだ。

その瞳が私を射抜くようにじっと見つめてくる。

そしてまた伏せられた目元。

再び重なった唇からは舌が入り込み、私の口内を犯すように刺激する。


「ふぁ……んん」


次第に口の端からは吐息が漏れ、私も副社長の首に腕を回した。

それが合図かのように、彼は私の服の中に右手を這わせ、空いた左手は私の後頭部を押さえて激しいキスから逃れられないようにした。

元々酔いが回って働いていなかった頭。

今度はそれと併せてキスにより酸素が薄くなり、また意識が朦朧とする。

腹部を撫でていた手が徐々に上に向かい、お世辞にも大きいとは言えない胸の膨らみを下から掬い上げるように刺激する。

その頂に指が触れた時、下着越しなのに「ひぁっ……そこ、だめ……」と甘い声が漏れてしまう。

「ダメ?……身体は嬉しそうですけどね?」

「ちょっ……まって……」

「本当に可愛い」


キスをしながら器用に脱がされた服。下着姿になると同時に広いベッドに押し倒されて、上に跨るようにしてから私の両手を自分の両手と繋いで何度も甘いキスを降らす。

次々と襲う刺激と漏れる嬌声。アルコールが媚薬のように私の身体を敏感にして、全身が性感帯のようにさえ感じる。甘い吐息が幾度もこぼれ落ちた。

……どうして私は、今、副社長と体を重ねているのだろうか。

どうして、振られたんだろう。
どうして、私じゃダメだったんだろう。

副社長に抱かれているのに、私は副社長とは別の人ことを考えていた。

嬌声を漏らしながら、私を振った相手を重ねていた。

目尻から耳にかけて、涙が一筋流れる。

それを見て、副社長はピタリと動きを止めたかと思うとすぐに熱い舌がその涙を掬うように舐めた。


「ヒャッ……」

「僕に抱かれながら、別の人のことを考えている余裕があるなんて……ちょっとショックですね」

「え、あ……」


言葉と共に、手が離れて私の身体を撫でるようにどんどん下に降りていく。


「だめ……」


恥ずかしさで空いた手で顔を覆う。しかしそれを持ち上げられて深いキスが落とされた。


「他の男のことなんて考えてる余裕、無くしてあげますよ」

──その言葉と共に、私は快楽の海へと沈んでいくのだった。
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