夫婦間不純ルール
岳紘さんに対しての後ろめたさはあったものの、奥野君の存在に私は今とても救われている。誰かが自分を必要としてくれることで、こんなにも前向きになれるなんて。
そんなことを考えていると、スマホを操作していた奥野君が何かを思い出したように顔を上げた。
「俺も次の週末は用事があるんでした。確か、奥さんが一日空けておいてくれって」
「そうなの? じゃあ仕方ないわね、お互いに来れそうにないもの」
そうは言ったものの、私は少しだけ胸にもやっとしたものを覚えた。奥野君の中で奥さんが優先された瞬間、私も同じことをしているにも関わらず何だが不満のようなものを感じたのだ。
まさか、そんなはずはない。私はちゃんとこれが慰め合いだと割り切っているはずだから。
「雫先輩、どうしました?」
「ううん、何でもないの。それにしても奥さんからの誘いなんて奥野君も本当は嬉しいんじゃない?」
そんな私の言葉に彼は複雑そうな表情を浮かべただけだった。嬉しくもありそれでいて苦しいのかもしれない、奥さんの考えが読めなくて。
「雫先輩は妬いてはくれないんですね、俺は結構嫉妬してるのに」
「馬鹿なこと言わないで。それよりも……」
奥野君の言葉に喜びを感じながらもそれは表情に出さず、そのまま話題を変えてその日は彼との時間を過ごしたのだった。