夫婦間不純ルール
Rule 11
「どうしたの、ボーっとして? そろそろ時間だって言ったのは岳紘さんの方でしょう、ぼんやりしていていいの?」
「……あ、いや。その、なんていうか」
今日は夫に同伴を頼まれたホームパーティーの日だ、この日のために岳紘さんの印象が悪くならないようにと新しいワンピースを購入した。
派手過ぎず柔らかな色合いの服を私は結構気に入っているのだが、夫は困った様に口元を隠して目を泳がせている。もしかして私には似合ってないのだろうか、友人の麻理に見せた時の反応は良かったのだけど。
「気に入らないのなら着替えてきた方が良いかしら。これでも考えて選んだつもりだったけど」
「いや、それでいいと思う。その……雫にとても似合っているから」
一瞬、私は夢を見ているのかと思った。少なくとも岳紘さんが私にこんな事を言って来た事は無かったから。シャイで女性に気軽に声をかけられるような人ではないし、服や容姿を褒めるのだって凄く苦手なはずなのに。
……どうして今日に限って、そんな事を言うの?
「そうならいいのだけど。ありがとう、褒めてくれて」
「いや、思ったことを言ったまでだから」
何というか、急にむず痒いような気持ちにさせられる。まるで中高生の男女交際のような初々しい気持ちとじれったさを味わっているようで。
急に恥ずかしくなって岳紘さんの顔を真っ直ぐに見れなくなった。