夫婦間不純ルール
あの日、岳紘さんから渡された用紙に書かれた内容に何度心が沈んだか分からない。朝起きれば夢だったのかもしれないと、毎日この棚のなかを確認したほどだった。
このルールが決められてから数日は夜も眠れなかった、夜中に夫が別の女性に会うために出ていくのではないかと不安で。
今もまだ岳紘さんが別の女性ところに行ってしまうのではないかという心配がなくなった訳じゃない。彼はただ以前と変わらない態度で私に接してくるだけだから。
それにしても……
「どうして今になって一緒に食事に行こうなんて言うのかしら?」
形だけの妻、そんな私と共に食事に行ったところで岳紘さんは楽しめるのだろうか。自分だって今の彼と二人で穏やかな時間を過ごせるとは思えない。
……それでも断れなかったのは、やはり岳紘さんが考え直してくれるのではないかと期待してしまっているからかもしれない。
「浮気を許し合う関係でいるなんて、それでも私たちが夫婦である意味はあるの?」
そう問いかけても、答えてくれる人などいない。結局親にも友人にも相談出来ないまま、その疑問はずっと私の頭の中で渦巻いている。
……好きだからこそ、離れないと諦められないのに。それすら出来ないなんて、私はこれからどうすればいいのだろう?