夫婦間不純ルール
急に騒がしくなった周りの様子に、岳紘さんも私も会話を止めてそちらの方を見る。さっきの答えが知りたい気持ちもあったが、それをしつこく聞くのも少し怖くて。
それにしてもヘアメイクアーティストの『REIKA-OKU』と言えば、私もつい最近テレビでも見た気がする。彼女は美人というよりちょっと個性的で、可愛らしい女性だった気がするのだけど……
「いらっしゃい、玲香さん」
「まあまあ! よく来てくれたわね、玲香。お仕事が忙しいのに、今日はわざわざありがとう」
柳澤部長とその奥様らしき人物が『REIKA-OKU』に近づき、仲良さげに挨拶を交わしている。聞こえてくる会話から、彼女が柳澤さんと親戚関係にあるようだということが分かる。
もしかして今日のゲストとして呼ばれたのだろうかと、そんなことを考えていると……
「ふふふ、大好きな叔母さんに呼ばれたら来ないわけにはいかないじゃない? 今日は夫もついてきてくれたのよ」
そう話した『REIKA-OKU』の隣に、背の高い男性が近づいて優しく彼女の肩を抱く。とても仲の良い夫婦なのだろう、羨ましく思ってその男性の顔を見た瞬間に身体が一気に凍り付いたような気がした。
「……そんな、どうして?」