夫婦間不純ルール
今見ている光景が信じられなかった。柔らかそうな明るい髪も、人懐っこそうな笑顔も私の知っているそれと全く同じ。何故、彼がここに?
どうしてカリスマヘアメイクアップアーティストの『REIKA-OKU』の隣で、楽しそうに笑っているの?
「雫、どうかしたのか? 顔色が良くないようだが」
「あ、いいえ。何でもないの……」
私の様子がおかしい事に気付いた岳紘さんが声をかけてくれたけれど、上手く誤魔化せなかったかもしれない。それくらい私の中ではショックが大きくて。
「雅貴君も来てくれてありがとう、いつも玲香が我儘言ってるんじゃない?」
柳澤さんの奥さんが、隣の男性に話しかける。雅貴……奥野雅貴、間違いなく彼は私の後輩の奥野君だ。
「そんなことないですよ、俺の方が彼女には面倒ばかりかけていて。玲香は仕事も頑張ってますが、良き妻でもあるんです」
「もう~、雅君はそういうことばっかり言って! いつも家事も店の事もたくさん手伝ってくれてるじゃない」
笑顔でそう返事をする奥野君と、そんな彼の隣で楽しそうに話す玲香さん。私が聞いていた話とは……全然違う二人の姿がそこにはあった。
どうして? 奥野君が私に話していたことは何だったの、私たちは似た者同士だと思っていたのに。