夫婦間不純ルール
「ん……、ここは私の部屋?」
「雫、気が付いたか? 気分はどうだ、用意しておいたから水を飲むといい」
常夜灯が付いただけの薄暗い部屋の中、いつの間に帰ってきたのか私は自分の部屋んのベッドで眠っていた。ここまで歩いた記憶はない、もしかして岳紘さんに運ばれてきたのだろうか?
差し出されたコップを受け取り、ゆっくりと喉を潤していくと少しだけこうなる前の事を思い出してきた。そうだ、私はあの時……
奥野君が奥さんと仲良さげにしている様子にショックを受けて、岳紘さんの言葉に反抗して泣き喚いたんだった。感情的になってしまったとはいえ、なんて事をしてしまったのだろう。
「……その、ごめんなさい。あの時の私はちょっとおかしかったの、岳紘さんは何も悪くないのにあんな風に責めてしまって」
「俺は気にしてない、言いたい事があればハッキリ言ってくれて構わない。俺たちは、夫婦だろう?」
夫婦、確かに私たちは夫婦だ。どこの夫婦よりも、心の距離がある形だけの。だけど今の岳紘さんの態度はとても真摯なように感じた、上辺だけでなく本心でそう言ってくれているようで。
最近少しだけ私達夫婦の距離を、彼の方から短くしようとしている気がするのは私の気のせいだろうか?