夫婦間不純ルール
Rule 12
「麻実さん、この資格を受けてみる気はないかな? 取得すればこれから先、君の役にも立つと思うんだけど」
「資格、ですか? それって、私が受けてもいいんですか」
こういった資格取得の話が私に来ることは珍しい、普段この職場では勤務時間の長い職員が優先されることが多いから。就職後、割と早く婚約した私は気を使われていたのかあまり聞かれもしなかったし。
もし他に希望者がいれば、その人に譲った方が良いのかもしれない。そう思って聞き返したのだけど……
「麻実さんは真面目だし患者さんからの評判もいい、だからもっといろんな業務に携わって欲しいんだよね。どうかな?」
「そうなんですか、それなら是非」
褒められて嫌な気はしない、仕事振りを評価されたのも嬉しかった。真面目だけが取り柄のような私を、こうして認めてくれる職場が本当に有難くて。
声をかけてきてくれた医師の後ろで、久我さんが「良かったね!」というように笑顔で親指を立てているから、吹き出しそうになってしまう。
「勉強できる時間はあまり無いのだけど、麻実さんなら大丈夫だと思う。確か学生時代の成績も良かったと聞いているし」
「そんなことは無いですけど、合格できるよう精一杯頑張ります」
「うん、それじゃあよろしくね!」
そう言って資格の書類を手渡すと、男性医師はまた自分の持ち場に戻っていく。あの日から落ち込み気味だったけど、おかげで少しだけ気持ちが浮上したような気がしていた。