夫婦間不純ルール
二人の間で交わされたルールを守る、それはいつか壊れる未来を私はただ待つしかないということではないのだろうか? 愛する人が出来ればいつかはその女性と一緒になりたくなるはず、その時に少しでも罪悪感を感じなくて済むように私にも他に恋人を作れと言っているのかもしれない。
「申し訳なさを感じるなら、さっさと離婚に応じてくれれば良いのに」
あれから何度かそれとなくその意思を伝えようとするが、岳紘さんには上手くかわされてしまう。そんなにお互いの両親に離婚したいと言いにくい理由があるのか、彼は頑なに離婚話を拒んだ。
苦しいのはそれだけじゃない、一番私を悩ませるのは私自身がまだ夫を好きでたまらないと言うことだった。気持ちが冷めてもおかしくないようなことをされながらも、彼のいつもと変わらない優しさに心がずっと揺れる。
嫌いになれたら、そう思うのにそうさせてくれない狡さが岳紘さんにはあった。
他の誰かを触れた手で私に触れないで、知らない女性に見せた笑みと同じ笑顔を私に向けないで! 心の中ではそう叫んでいるのに、自分に無関心でいられるよりは良いのかもしれないと考えてしまう。
そんな葛藤と自己嫌悪で、どうにかなってしまいそうになっていた。
……岳紘さんとの約束の日、待ち合わせまでの時間潰しに寄った店で彼と再会するまでは。