夫婦間不純ルール
「すみません、先に言うべきか迷ったんですけれど。その時になって知った方が、雫先輩の心のショックが大きいんじゃなかって思って」
「……」
奥野君の言う通りだ。もし岳紘さんが女性だけでなく子供まで連れて歩いている姿を見たら、きっと冷静ではいられなかったはず。いま知って良かったんだと、頭では分かってるのに……
もしも、そう……もしもの可能性が脳内を過って、不安で心が落ち着かない。
「その、男の子が……岳紘さんの子である可能性は、あるの?」
「……それは、俺にはまだ分かりません」
奥野君の答えは当然のものだった、きっと彼はこの場所で何度も夫と女性の姿を見ていただけのはず。一緒にいた子供が誰の子かなんて分かるはずがない。
大体、その女性には夫がいたはずだからその人との子供の可能性の方が高いはず。それなのに……
「ですが、その男の子は学生時代のアイツをもっと幼くしたような顔でした」
「……そんな、うそ‼」
奥野君は岳紘さんの顔を良く知っている。エスカレーター式の中高大一貫校に通っていたからこそ、なのだけど。奥野君の言葉を疑う訳じゃない、でも信じたくなかった。
私とは体の関係すらも拒否する彼が、他の女性とすでに子を成しているなんて。