夫婦間不純ルール
「良かったんですか、雫先輩? アイツをそのままにしてきて、きっと今頃……」
「そうかもしれない、でももう私も限界だもの。今の勢いだけで突撃したとしても、きっとすぐに後悔するでしょうし」
三人が仲良く家に入っていく写真は撮ったが、まだ十分な証拠とは言えないだろう。相手の女性の自宅が分かったからには、これから色々調べることも可能だと思うし。
それに岳紘さんと女性がいつからそういう関係になったのかもきちんと知っておきたいと思ってる。もし私と結婚する前から想い合っていたのなら、何故親に反抗してでも私との結婚を拒否しなかった?
いくら親同士の付き合いがあると言っても、そこまでする必要などない筈だから。
そんなことを考えていると、スマホの着信メロディーが流れてきた。鞄からスマホを取り出しディスプレイを確認すると……
「ごめん、奥野君。岳紘さんのお母さんからだわ、ちょっと黙っててもらっていい?」
「ええ、大丈夫ですよ。出てください」
奥野君はこちらの会話を聞かないように気を使ってくれたのか、お手洗いの方へと向かっていく。それを確認してからスマホの画面を指で操作し、お義母さんとの通話を始めた。
「……もしもし、雫です。どうかしましたか、お義母さん」
『久しぶり、雫さん! 今日ね貴女の病院に行ったら、早退したって聞いてね。もしかして具合でも悪いのかと思って電話してみたんだけど』