夫婦間不純ルール
「だって、普通そこはストーカーだった? と聞く前になにか思ったりするんじゃないですかね。例えば……学生の頃は俺が雫先輩に好意をもっていた、とかね」
「馬鹿馬鹿しい、奥野くんはあの頃ちゃんと彼女がいたでしょ。私だって本当にあなたがストーカーになるなんて思ってないわよ」
ふざけたことばかり言うところも変わらないらしい、昔からこうやって先輩である私のこともよくからかってきた。すぐに分かる嘘ばかりだしすぐに謝るから、結局みんな許してしまうのだけど。
奥野くんに彼女がいたのも本当だ、同い年の可愛い女子でいつも彼の傍から離れようとしなかったのを今でも覚えている。
「結局……アイツは幼馴染みだって、何度言っても誰も信じてくれなかったですよね」
「彼女が自分達は付き合ってると何度も話してくれたのよ。それにいつも一緒にいればそう思われても仕方ないんじゃない?」
確かに奥野くんから彼女が恋人だと紹介されたことはなかったが、みんなそうだと信じて疑わなかった。それなのに、奥野くんは私の言葉を聞いて方を落として見せる。
「周りがそう思い込んでるから、結局俺は学生時代まともに彼女も作れなかったんですけどね。そうしたアイツは大学でさっさと彼氏つくって俺から離れていきましたけど」
「それは、また……」
意外な事実を聞かされ、少しだけ申し訳ない気持ちにもなる。
あの幼なじみの女子が何をしたかったのかは分からないが、奥野くんは振り回されて大変だっただろう。いつものほほんとして笑っていたから、全然気づかなかった。
「……それで、ちょっとくらいは気になるようになりました?」
「気になるって、何が?」