夫婦間不純ルール
「余計なお世話、ただの学生時代の後輩の貴方が口を出す事じゃないわ」
自分もそう思う、なんて言えるわけない。夫である岳紘さんが選んでくれたリングだ、輝くダイヤも決してそれが安物ではないことを証明している。彼の気持ちを……否定するような言葉は口にしたくなかった。
そんな私の気持ちを見透かされないように、必死にポーカーフェイスで誤魔化そうとする。なのに……
「ただの後輩でしかいさせてくれなかったのは先輩の方でしょ? 俺はそんなつもりなかったのに」
「……どういう、意味?」
遠回しだが相手に気を持たせるような発言をする奥野君を、少し睨むように見据える。既婚者だと話しているのだし本気ではないのだろうが、揶揄われるのは良い気分はしない。
学生の頃よりずっとカッコよくなった彼だが、中身は随分軽くなったのかもしれない。私を見返す奥野君の視線が、どこかで私を試しているようにも見える。何が……言いたいの?
「まだ、分からない? それともそうやってずっと知らないふりして、あの男だけに尽くそうと思ってる? 俺知ってるよ、アイツが別の女性と会っていること」
「いま、なんて……」
嘘を言うな、と言えなかった。奥野君は私の夫である岳紘さんの顔を知っている、何度も彼と一緒に覗き見したりもしていたから。そんな奥野君が見間違えるとは考えにくい。
震える声で聞き返せば、彼は私の横髪を手で掬い唇を寄せる。ギョッとして身を引こうとするが、ニヤリと挑発的な笑みを浮かべた奥野君に負ける気がしてその行為に耐える。
「……続き、聞きたいですか? 雫先輩がもっと教えて欲しいってお願いしてくれたら考えますよ」