夫婦間不純ルール
「な、何するの? 別にそんなに眠いわけじゃ……」
「いいから、雫は昔から他人に甘えるのが苦手なのは分かってるし」
そう言うのなら何故いつものように放っておいてくれないのか? そうして欲しかった時には言葉以上のものはくれなかったくせに。
私が岳紘さんからの愛情を欲しがっていたことくらい、彼だって分かっていたはずだ。それを見てもぬふりをしていたのに、どうして今更……
「苦手なわけじゃないのよ、ただそう言うのは嫌いだと思ってたから」
昔はもっと無邪気にこの人に甘えていたような気もするが、いつも複雑な表情をする彼を見てそういった行動は我慢するようになった。岳紘さんに嫌われるよりその方がずっと良かったから。
「嫌いなわけじゃない、ただ……」
「ただ?」
何故今になって、そんな事を言い出すのか? もっと早く教えてくれていれば、私だってもっとありのままの自分で彼のそばに入れたのに。
なのに……他の男性に目を向けるように言ったその口で、心を揺さぶるような事を言うなんて。
「照れ臭かった、それだけで」
「そうだったのね」
前の自分なら大喜びして、岳紘さんに甘えて見せたかもしれない。でも、今はそうじゃない。私は両手で岳紘さんの体を押して、彼から距離を取った。
……今の自分達に、合っている距離を。