夫婦間不純ルール
Rule 4
「旦那さんが急に優しくなった? それでどうして困るのよ、いつものアンタなら喜んでるはずなのに」
「……そうよね、確かに麻理の言う通りなんだけど」
麻理は私の小学生時代から続く友人で、岳紘さんに私が長く片想いしていたこともちゃんと知っている。だからこそ、彼女は私がこう言う時どんな反応をするのか分かっているのだけど。
……そんな親しい友人の彼女にすら、私は今の夫婦の状態を話せずにいたから不思議に思われても仕方ない。
「なんだか煮え切らない様子ね、もしかして旦那さんと何かあったの?」
「そう言うわけじゃないけれど」
言えるわけない。ずっと彼だけを思ってそばにいたのに、その相手に他の男性に目を向けるように勧められているなんて。そんな残酷な話を麻理に聞かせたら、彼女は夫のところまで文句を言うために突撃しかねない。
話して楽になりたい気持ちもあるが、まだ私はそれを麻理に伝える勇気がなかった。
「……急に恋人や配偶者が優しくなるのは、浮気している罪悪感から。なんて話も、雑誌で読んだけどまさかあの岳紘さんに限ってねえ?」
「浮気、罪悪感……」
麻理の言葉が私の胸にぐさりと刺さる、思い当たることが多すぎて頭がグラグラしてきた。そんな私の様子に先ほどまで明るかった麻理の様子が一瞬で変化した。
彼女の真剣な視線が、私の中にある迷いも苦しみも全て知ろうとするかのようにじっと向けられる。
「……本当に、そうなの?」