夫婦間不純ルール
本当のことが言えたらどれだけ楽になるだろう? それでもちっぽけなプライドと見栄がそうはさせてくれなかった。
「そんなはずないでしょ? 麻理はそうやってすぐに物事を大袈裟にしようとするんだから、それで何度も怒られてるんじゃないの」
「う、それはそうだけど……」
昔の話を引っ張り出して、上手く誤魔化せたと思う。痛いところを疲れた彼女は、それ以上は岳紘さんのことについて聞き出すことを諦めたようだった。
……こうして、親友のはずの麻理にまた隠し事が増えていく。
もし全てが彼女にバレてしまったら、今の私と麻理の関係も崩れてしまわないかとても不安だった。そんな私の気持ちを見透かしたように、麻理は真面目な表情で――
「私は怒られてもいいのよ、雫の力になれればそれで。だから……私の助けが必要な時はちゃんと呼びなさいよ?」
「麻理……」
もしかしたら麻理には私が言えないでいる秘密もなんとなく気付いているのかもし得ない。私と岳紘さんの夫婦仲についても、いつも当たり障りのない会話だけしかしないでいてくれてたから。
このままでは我慢出来ず全てを話してしまうかもしれない、そう思い私は話題を変える事にした。
「そういえば……麻里も覚えているでしょう? 後輩の奥野くん、彼と駅近くの喫茶店で会ったのよ」
「奥野君て、あのお調子者のぽっちゃりくん?」
麻理の記憶の中に残る奥野君のイメージはやはり私の持っていたものとそう変わらなかった。だけど、それは昔の話で今の彼は違う。
「それがね、別人かと思うほど奥野君は見た目が変わってて……」
「ええー、それホントぉ?」