夫婦間不純ルール
興味のある話だったのか、奥野君の話題に麻理は興味津々のようだった。話題がそれたことに安心したが、これはこれでなぜか複雑な気持ちになる。
もしかしたら麻理は奥野君に好意でも持っていたのだろうか? だが、すぐにその考えを頭から追い出した。思い出したのだ、奥野君の左手の薬指にはめられた指輪を。
「ええ、変わっていたけどそれはきっと奥野君に特別な相手が出来たからなのだと思うわ。あのプラチナのリングもきっとその女性と選んだのでしょうし」
「……結婚、してるの? 奥野君って」
麻理がショックを受けたように見えて、私は言葉のチョイスを失敗してしまっっと後悔しそうになる。今まで一度だって彼女からそんな事を聞いたことはなかったが、鈍感な自分が気づかなかっただけかもしれない。そう思ったのだが……
「うっそおー! 絶対に彼よりは早く結婚できると思ってたのに、こんなの信じられないわ」
「麻理、貴女ねえ」
真面目に考えた自分が馬鹿だったのかもしれない、麻理は昔からこういう性格だし奥野君に想いを寄せるなどあり得ない。呆れてしまって頭痛を感じていると、麻理が真剣な表情で私を覗き込んでいた。
「なに?」
「分かっていると思うけど、いくら変わっててもアイツに気を許してはダメよ」
何故? とは聞かなかった、なんとなく理由がわかってしまったから。今の奥野君はきちんとした相手がいるし、私にも岳紘さんという夫がいるのだ。
たとえどんなつもりで奥野君が私に声をかけたのだとしても、もう一度会いたいなんて思うわけにはいかない。