夫婦間不純ルール
そんな風に考えてそのままぼんやりとテレビの画面を眺めていた、チャンネルを変える気力も失ったように。司会者のトークも女性の輝きに満ちた笑顔もどこか遠い世界のように感じていた、その時……
「REIKAさん、新婚生活はどうですか? これだけ忙しいとすれ違いも多いでしょうけれど、旦那さんはとてもREIKAさんの仕事に理解のある人だそうですね」
「そうですね、新婚と言っても私と夫は学生の時からの付き合いですので。どちらかといえば甘い感じよりも、少し落ち着いた夫婦生活を送っているかも知れませんね。仕事に関しても同じ職業ということもあって、互いを尊重し合えていると思いますし」
「いいですね〜、仕事もプライベートも充実している! そんな女性が憧れるカリスマヘアアーティストである秘訣は……」
堪らなくなってそこでテレビを消すスイッチを押した。仕事でも大成功して円満な結婚生活まで送っている、そんな彼女と今の自分と比べてあまりにも惨めな気持ちになってしまって。
私だって自分なりに頑張って仕事をしている、医療事務という職業は自分に向いていると思っているし不満もなかった。それでも……
「お互いを尊重しあえて、落ち着いた夫婦生活。私たちとは、大違いよね」
小さく笑ったが、なにも楽しくなどない。それどころか妙に喉が渇いて、キッチンでグラスに水を注いで一気飲みした。これがアルコールであれば少しは気がはれたかも知れないが、先程ワイングラスを割ってしまったためかそんな気持ちにもなれないでいる。
夫と会話をすれば報われない自身の想いを持て余して辛くなり、こうして周りを見れば羨み妬む気持ちばかりが湧いて苦しくなる。悪循環の中をただグルグルと行き来しているようで。
なにも考えたくない、そう思った私はモヤモヤを払拭するように熱いシャワーを浴びてベッドに潜り込んだ。せめて……夢の中でだけは幸せな気持ちでいられますようにと願いながら。