夫婦間不純ルール
「……結局、あいつに泣かされたんですか?」
「どうしてそう思うの、他の理由だってあるかもしれないのに」
言い返しても私がここにいる理由なんてバレバレだということくらい分かってる。でもそれを素直に認めてしまうのは悲しくて悔しい。
奥野君は私に夫が別の女性と会っていると私に教えてくれたのに、都合の悪い事を聞かない振りしたのは自分自身だったから。
「想っていればいつか私を見てくれると信じていたの。馬鹿みたいでしょ、笑ってもいいのよ?」
「……笑いませんよ、他の誰が何と言おうと俺は雫先輩の味方。悪いのは先輩を泣かせるあいつなんだから」
私の言葉を真剣な表情で聞いてくれる彼の手が、テーブルに置かれたままになっていた私の手に重なったが振り払いはしなかった。それにどんな感情が含まれていたとしても、今の私に必要なのは人の温もりと癒しなんだと分かっていたから。
それに、奥野君が強引に私の嫌がることはしないという自信もあったのかもしれない。そこで私はふと気が付いた。
……夫の岳紘さんには私が気を使う立場なのに、こうして奥野君を相手にすると気を使われる立場になっていることに。
「変なの……」
「え? 何が変なんです、それって俺の事?」