夫婦間不純ルール
「あいつと別れることは考えてないんですか?」
「それも分からないの、夫がそれを望んでいるのかもハッキリしていなくて」
すぐに『離婚』という言葉を考えられないのは、私の心がまだ夫である岳紘さんにあるからなのかもしれない。医療事務という職に就いてはいたが、彼と離れいきなり一人で生きていける自信もなかった。
そんな私の心を読んだかのように、奥野君は小さく頷いただけでそれ以上答えを求めてはこない。ただ少し悩んだような素振りを見せると、少し間を開けてこう言った。
「……俺が協力しましょうか?」
「協力って、何を……」
まさか離婚を、という事だろうか? 彼の言葉に私が戸惑っていると、奥野君は慌ててその話の先を続ける。
「協力するっていうのは、あいつがどういうつもりで他の女性と関わっているのか調べること。それと雫先輩の事をどうするつもりなのかをハッキリさせることです」
「でもそれは……」
奥野君は私に気を使って岳紘さんが浮気をしているのだとは言わなかったけれど、私はもう答えを知っている。それをわざわざ知りたいかと聞かれると、正直かなり辛い。
他の女性を想う夫の姿を見るのも、彼に愛される相手の女性を知るのも今の私には苦しくて。
「辛い結果になるかもしれません、でもこのままあやふやにしてたら雫先輩はずっとあいつに傷付けられるだけだ」
「奥野君……」