夫婦間不純ルール
「ありがとうございます、久我さん。その気持ちだけで、十分嬉しいです」
「でも、麻実ちゃん……」
それは素直な気持ちだった、職場の先輩だからとかではなく純粋に心配してくれている。それが痛いほどに伝わってきて、今にも挫けそうだった心を励ましてくれたのだから。
だからといってすぐに何かの解決策が浮かぶわけじゃないけれど、それでも久我さんは私にもう少し頑張るための元気をくれる。
「私はとても良い先輩に恵まれてたんだって、今頃になって気付きました」
「今になってそういうこと言うのね、もう!」
これが空元気だという事はきっと久我さんにもバレてるだろうけれど、それでも私は少しだけ笑えてる。きっと彼女が声をかけてくれてなければ、こんな作り笑いも出来ないままだったはず。
まだ大丈夫、私は。だから……
「ふふふ、そうなんです。もっと周りをよく見てみることにします、これからは」
「そうしなさい、さあ仕事に戻るわよ。今日も忙しいんだからね、麻実ちゃんには元気に働いてもらわなきゃ困るの」
そう言って先に受付に戻っていく久我さんの後ろ姿を見ながら、今は自分に出来る事とこれから先必要になることを頑張るしかないと考えていた。
どんな未来が待っていても、その時には一人で立っていられるようにと。