夫婦間不純ルール
久我さんの言う通りだ、私はいつも岳紘さんの事だけを優先に考えて生きてきた。だからこそこんなに今は苦しくなっているのかもしれない。
もっと以前から周りに目を向けていれば何か違っていたかもしれないのに。
「……今からでも、遅くないですかね?」
「それはそうよ、もしかしたら気付いた時がベストなタイミングなのかもしれないし? 麻実ちゃんはまだまだ若いんだから」
彼女がそう言うと、それが間違ってない気がしてくるから不思議。こうして前向きな考えを聞いていると、自分も前を向いて進めるのではないかと思えるから気持ちが良い。
近くのチェーン店の居酒屋でカクテルと生ビールで乾杯して、普段は注文しない豚足やあん肝にも久我さんと一緒に挑戦してみたりした。
「悪くないですね、新しい事にチャレンジするのって。いままでずっと自分にとって安全なものばかり選んでいましたから」
「そうね、それも悪くは無いと思うけれど……麻実ちゃんなら、まだやったことのない事にもどんどん手を出してもいいんじゃないかしら」
久我さんの言う通りだと思う、これは私の人生で責任を取るのも自分自身。これまで岳紘さんだけを中心に考えてきた私だったけど、それじゃあ駄目なんだ。
ハッキリと自分の気持ちも考えも伝えて、夫との関係を変えていく必要があるんだってやっと分かったような気がした。
「なんだか頑張れそうです、久我さんのおかげで」
「私は何もしてないわ、ただお節介なだけよ」
この日は久我さんと笑顔で別れることが出来た。いつもより少し遅い時間になったが、朝とは別人のようにすっきりとした顔で私は帰路についたのだった。