夫婦間不純ルール
「……今朝も、なのね。もう何日目かしら」
あの日、私と岳紘さんが衝突した夜から彼の顔をほとんど見ることはなくなった。二人とも今まで通り同じ家で暮らしているにもかかわらず、だ。
テーブルに置かれた朝食の内容は昨日とそう変わらない。だけど朝早起きして夫が作ってくれているのは間違いなくて。どうして数日たった今もそうするのか、私には理解が出来なかった。
これが罪悪感からだというのなら、私を避けながらも食事を準備する必要はもうない気がする。それだけでなく岳紘さんは、私が用意した夕食を深夜に帰宅しきちんと完食してくれている。一度は食べずに捨てているのかとも疑ったが、きちんと食べた形跡も残っていて。
「分からない。岳紘さんが何を考えてるのか、これから先どうしたいのかも」
二人の間に冷却期間が必要だと夫は考えたのかもしれないが、その時間が私の心を余計に頑なにさせていることに彼はきっと気付いていない。
自分から謝るつもりはなかった、先に裏切ったのは岳紘さんの方だもの。そんな思いが何度も浮かんでは私の胸の奥に新たな傷をつける、何度も繰り返し繰り返し。
……一度拗れた関係はお互いがそこから目を背けた瞬間、どんどん悪化し手の施しようがなくなる。それがどんな些細なことが原因で始まったことで、本当はそのどちらにも非など無かったとしても。